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「子どもの人権を守る鹿児島県連絡会ニュース」第56号(2002年3月11日発行)より

他に例を見ないいじめの事実 ─ 知覧中裁判・判決の意義 



 被告の元同級生らと町に対して、総額四四八〇万円余りを支払うよう命じた鹿児島地裁判決(二〇〇二年一月二八日)が二月一二日をもって確定しました。
この判決と裁判の意義について、少し述べてみます。



 判決の第一の特徴、意義は、いじめ自殺裁判のなかでは過去最高の賠償額を認容したことです。


 まず、金額のうえからも大きな勝訴と言ってよいでしょう。
もっとも、町からは判決にもとづいて一三二〇万円が支払われるものの、残りの三一六〇万円余りについては、被告の元同級生らには「支払い能力がない」などと言って、判決を大幅に値切ろうとする動きもあり、今後の折衝などが重要になっています。


 判決の第二の特徴、そしてこの点がもっとも意義のあるところですが、それは、L君、O君の法廷での証言をはじめ、同級生一九人の陳述書も証拠として採用し、勝己君への継続的ないじめの事実をじつに広範に認めたことです。


 判決文のなかで最も分量が多いところで、「第三 争点に対する判断」の「一 勝己の自殺に至る経緯等」は、是非ともご覧ください。


 勝己君は遺書に「俺が死ねばいじめは解決する」と記して自殺しました。


 勝己君の死を無駄にしないためにも、いじめとはいったいどういうものなのか、知覧中での事実を多くの人たちに知ってもらう必要があります。


 勝己君が亡くなった直後からの調査により、提訴の前に、あらかたのことはわかっておりましたが、ご両親が裁判を起こしたからこそ、判明した新事実も少なくありません。


 その一つは、被告元同級生らの警察などでの供述調書が手に入り、霜出での凄惨な暴行の様子がわかったことです。


 彼らは、笑いながら、殴る蹴るの暴行を楽しみ、その限りをつくして、最後には勝己君を気絶せしめたのです。


 勝己君が自死した二日後、葬儀が行われた、その日の午後に、彼らはリーダーの元に集まり、霜出での暴行は被告Dのせいにしようという口裏合わせまでしていました。


 また、彼らは直後、「警察ですべて話しています」などと言って、具体的な事実はほとんど述べずに形だけの焼香に来ていたのですが、それも調書によって、警察でも嘘を通そうとしていたことがわかって、合点がいくところでした。


 さらに、提訴後一年半ほど経ってから、知覧中生徒会役員だった元同級生から資料の提供があり、当時の生徒会がアンケート調査などを行っていじめの問題に取り組んでいたことがわかったことも、裁判の成果です。


 知覧中ではいじめが蔓延していました。
そのことは、アンケートからも明確なのですが、勝己君と同じ三学年の回答が際だって少なかったことが合わせて重要な意味を持っていました。


 W元生徒指導主任は、それは彼らが圧力をかけたからだろうと法廷で証言をしました。
知覧中の教師たちは、もちろん被告同級生ら、グループの存在を知っていましたし、生徒会係の教員から、アンケートの結果報告が職員会議にあっても、何ひとつ、具体的に取り組もうとしなかったのです。


 提訴直後、原告の村方敏孝さん・美智子さんは、その意義について、裁判を通して、真実を明らかにしていきたいと言っておりました。


 被告元同級生らは、ついに真実を述べず(一部、Dは書面において、原告側作成の書証にある日常的ないじめの事実をかなりの程度認めましたが)、また校長、教頭、担任らの証言も真実に背を向けるものでしたが(W元主任は率直でした)、原告側は資料などを駆使して、真実を解明していきました。


 いじめ裁判で、当該生徒に対するものだけでなく、他の生徒に対するものも含めて、これほどの事実を明らかにできた例を他に知りません。


 判決は、学年、学期を追って、その全容をほぼ概説しています。判決のもっとも意義のあるところです。


 判決の第三の特徴、意義は、被告元同級生らの暴行と勝己君の自殺との間に、事実的因果関係に止まらない、相当因果関係(自殺の予見可能性)を認めたことです。


 彼らがなした行為の当然の結果でもありますが、損害賠償認容額は、中学生の共同不法行為に対するものとしてはかつてなく厳しいものになっています。


 今後、中学生といえども不法行為を働けば、このように厳しく責任を問われることになるという、先駆的な判決になるものと思われます。


  第四の特徴、意義は、知覧中の責任について、勝己君に対する「暴行等を防止できなかった限度」であれ、学校はいじめ対策をいろいろやっていたという、被告知覧町のまったく嘘の主張を退け、その過失(「勝己の生命や身体等の安全を確保する義務を怠った」こと)を認めたことです。


 過去の判例に照らしても、一三二〇万円はけっして小さくはありません。「暴行等を防止できなかった限度」に止まらない賠償額と思われます。


 ただし、多くの人が指摘するように学校の「自殺の予見可能性」を認めなかったことは、判決の重大な問題点でした。


 第二で述べたように、勝己君に対する継続的ないじめの事実をあれほど広範に認定したにもかかわらず。学校の無為無策が彼らのいじめを助長したことは、疑う余地もありません。


 判決文のなかでは、「その後(霜出事件後─内沢注)も被告同級生らの勝己に対する暴行は反復継続しており、特に自殺直前にはエスカレートしていた」とまで述べています。


 ならば、これらの暴行などを防止できずに、勝己君を死に追いやった学校の責任についても、より明確に断罪することができたはずです。
ところが、その点では古い最高裁判例に縛られて、そこから一歩も出ようとしませんでした。


 そうした点では、今後とも判決の問題点を批判していくことが重要です。
しかし、全体的には、いじめの事実を明らかにしたことを中心として画期的な判決と評価することができます。


 教育関係者はとくに、学校が子どもたちの安全を確保する義務を怠るとどうなるかをこの裁判と判決から学んでほしいと思います。




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Last updated: 2003.9.15
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