TOPページ → 拝啓 奄美市教育長 様




2020年8月20日付け奄美新聞6面に僕の寄稿が掲載されました。

奄美市教育長に宛てた書簡のような形で書いてみました。

奄美市の事案について、その後の問題がどこにあるのか、その重要な一端を知っていただける記事ではないかと思っています。

現物は縦書きです。ご希望の方には、記事のPDFファイルをお送りしますので、メールをしてください。

ここでは、僕の横書き原稿記事を紹介します。


この僕の文章の終わりのほうに出てくる表現を使われて、奄美新聞さんは

「一方通行ではない対話を」

と寄稿にタイトルをつけてくれました。

掲載してくださったことと合わせて感謝します。

では、寄稿文をご覧ください。

(2020/8/26)






拝啓 奄美市教育長 様


                      内沢 達


 お盆休み明けもお忙しい毎日のことと思います。

 私は奄美市立中1年男子生徒の自死事案に関する第三者調査委員会の委員長を務めました。改めまして、よろしくお願いいたします。

 さて、先日、市教育委員会学校教育課の課長さんより、私が要望していた貴方様との面談について「控えさせていただく」との連絡をいただき、少し残念に思いました。どうぞお控えなさらないでください。


 私たちの第三者委員会は、調査とその結果の報告を終え、報告書(公表版)を公にした一昨年12月9日、委員全員で会見をしました。報告書本文のおわりに「検証や再発防止の取り組みの際には」「本委員会も協力を惜しまない」と記し、また報告書には記さなかったものの、再発防止のために市教委と懇談の機会を持ちたい旨表明しました。その後、手紙でもその要望を貴方様にお伝えしましたが、ご返事はありませんでした。昨年3月には、前課長さん宛にお手紙をし、少し間をおいてメールでも「懇談」の件はどうなっていますかと尋ねましたが、やはりお答えがありません。今年2月、貴方様に手紙で面談したい旨お伝えしましても同じでした。そうしたなか初めてご返事があったのは、先々月のことでした。


 6月29日AiAiひろばで、副委員長を務めた蝸D香弁護士(福岡県)とともにご遺族の父親と共同会見をおこない、翌日の訪問希望を予め手紙で貴方様にお伝えしていたところ、課長さんから「教育長は公務出張のため不在」で、「お会いすることができない」との連絡がありました。そこで、その後も面談についてお忙しい貴方様のご都合に合わせますのでよろしくとお願いをしていたところ、先述の少し残念なご返事をいただいた次第です。


 私たち第三者委の調査報告書は、再発防止に関する提言の一番目で、市教委が事案について事後の対応も含めて主体的な検証をおこなうことを求めています。貴方様は昨年3月7日の市議会で、「教育委員会を中心にして主体的にまず検証をする。その結果をウェブサイトに公表するということですので、そのことをまず進めていきたい」と答弁されています。それから1年5ヶ月が経過しても、「まず」おこないたいとおっしゃったことがなされていません。


 課長さんは、面談について「控えさせていただく」との書面のなかで、(今まで計8回を数える)「再発防止対策検討委員会の取組自体が主体的な市教委の検証である」と述べていますが、それは、成り立たない無理筋の考え方ではないでしょうか。「検証」とは「実際に調べて証明する」ことです(『広辞苑』)。私たちの報告書は「何が問題であったのか、どの時点で何をどのようにすればよかったのか」とも述べ、つまり事案に即して問題点や課題を具体的に明らかにすることを求めていますが、そのことはやはりなされていません。


 報告書は、教育長である貴方様ご自身のことについても述べています。なぜ貴方様は翌日午前の臨時校長研修会で「いじめた側の子が責任を感じて自殺した」と、まったく間違った説明をしてしまったのでしょうか。当日、当夜そして翌朝までの学校および市教委の資料に、そうした説明を根拠づけるものはありません。市教委は、亡くなったAさんが「まじめで穏やかなやさしい性格で、勉強や部活も頑張る生徒である」ことも把握していました。貴方様の場合、Aさんの遺書についての情報から、思い込みでそのように説明してしまったということはなかったと、はたして言えますでしょうか。Aさんが亡くなったのは家庭訪問直後です。放課後の指導も含めて担任のかかわり方は適切であったかどうか、貴方様には疑念はなかったのでしょうか。そうしたことも、まさに「主体的な検証」課題の一つとして問われているように思います。貴方様が市教育行政のトップとして範を示されますと学校教育課の有能なスタッフのみなさんも後に続かれることと思います。


 貴方様は、昨年6月24日の市議会で、「御遺族の方にもこの委員に加わっていただくこと、そして第三者委員会からも、お一人ぐらいはこの委員に加わっていただいて、具体的に御遺族、そして第三者委員会、私どもが三者が納得できるような、そういう資料を作成する」ともおっしゃっています。「三者が納得できる」。すばらしいご答弁だと思います。そうなるためには一方通行ではない対話が欠かせません。


 そこで私は、貴方様との面談を改めて要望いたします。

 ご返事をお待ちしております。

 残暑厳しき折、貴方様のご健勝をお祈り申し上げます。

                           敬具






同日の奄美新聞1面コラム「奄美春秋」は、最後にこの「寄稿」を紹介して、次のように締めくくっています。


「先日第三者委の委員長を務めた内沢達さんから教育長宛ての「寄稿文」が届いた。本日付紙面の6面に掲載している。果してこの1年、市教委は生徒の死に正面から向き合ってきただろうか。あの握手に見合うだけの対応を取ってきただろうか。寄稿文を読み、みなさんで判断してほしい。」

とても読ませるコラム記事でした。

「あの握手」とは?

コラム記事についても、PDFファイルがあります。

ご希望の方は、内沢達まで、メールをお願いします。






このページの一番上→


TOPページ → 




初出:2020.8.26 最終更新:2020.8.28

「たの研」内沢達のホームページ